患者さんからの質問にお答えします:睡眠薬と認知症の関連性について」

こんにちは、皆さん。暑い日が続いていますね。体調管理には十分お気をつけください。

今回は、多くの患者さんからいただく質問にお答えします。
「睡眠薬を服用することで認知症になるのではないか?転倒のリスクは上がるのではないか?」
というご心配をよく耳にします。特に、広く使用されているベンゾジアゼピン系睡眠薬が認知症リスクにどのような影響を及ぼすのかについて、最新の研究結果を交えてご説明します。

 

ベンゾジアゼピン系薬剤は、不安障害や睡眠障害の治療に広く用いられている薬です。これらの薬剤はその即効性と高い効果から多くの医療機関で処方されていますが、長期間の使用には転倒や認知機能への潜在的な影響などのリスクも指摘されています。

 最近の研究¹⁾では、ベンゾジアゼピン系薬剤と認知症リスクとの間には直接的な強い関連は見られないことが示されました。この研究は、5443人の認知的に健康な成人を対象に、平均11.2年間の追跡調査を行い、薬剤使用の影響を詳細に分析しています。研究結果によると、ベンゾジアゼピンの使用は認知症リスクの増加とは関連がなかったものの、時間の経過とともに海馬と扁桃体の容積のわずかな減少が観察されました。ただし、この影響は比較的軽微であるとされています。

 長年にわたりベンゾジアゼピン系薬剤を使用している患者さんからは、薬を変更すると、「前の薬の方が良かったので戻してほしい」という声を聞くことがあります。明らかに認知症とは関連していない場合、患者さんにリスクを正確に説明し、その人の状況に応じて最適な治療選択をサポートすることが大切です。認知症のリスクだけでなく、患者さんの生活の質や治療への満足度も考慮し、適切な医療判断を心がけています。

 

1)Ilse vom Hofe, Bruno H. Stricker, Meike W. Vernooij, M. Kamran Ikram, M. Arfan Ikram, Frank J. Wolters. "Benzodiazepine use in relation to long-term dementia risk and imaging markers of neurodegeneration: a population-based study," BMC Medicine, Volume 22, Article number: 266 (Published: 02 July 2024)

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